「この湯で、あなたと」第1話 感想|ナンパの撃退が華麗すぎる
この記事には「この湯で、あなたと」 第1話のネタバレが含まれます。未見の方はご注意ください。

第1話、銭湯でゆるく和む話だと思って開いたんですよ。
主人公の五十嵐椿は32歳。会社の休憩室に入ろうとしたら、中で自分の話をされてるんです。「結婚考えてるならギリギリだよねー いくら美人でもねー」。それで入っていって「そういうの興味ないので」と切り捨てる。コマの隅に「塩。」って入るくらい見事な塩対応で。
なのにその日の夜、銭湯の湯船に沈みながら心の中で「うるさい……! 他人のことは放っとけバカ!」って叫んでるんですよ。言い返せなかったぶんを湯の中でやってて、ここで椿のこと好きになりました。
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撃退の仕方が華麗すぎる
同じ銭湯の洗い場に、幼女の髪を洗ってる若い女性がいます。椿は若いママだと思って見てるんですけど、本当の母親が後から来て「泉ちゃん ありがとねー」。ママじゃなかった。しかもこの子、その母親のことも、背中を流してあげた常連のおばあちゃんのことも「フォロワーさんなんですー」と言うんですよ。
答えは銭湯を出たところにありました。路上でライブをやってる5人組、「蒲田の温泉アイドル しっぽプロジェクト」のワンコ担当。それが泉でした。
で、ここからです。帰ろうとした椿が男二人にナンパされて固まってしまう。そこへ泉が「わんわんっ」と割り込んできて、男たちに自分たちのライブのチラシを押しつけて、そのまま会場まで連れて行ってしまうんです。
対応が華麗すぎません!? 誰も傷つかないし、なんなら客が二人増えてます。
そのうえ一週間後、椿がお礼に牛乳をおごりに行ったら「えっ? あたし何がしましたっけ?」。覚えてないんですよ。ずるいでしょう、こういうの。
「温泉アイドルですから! わんっ」
分割浴の話は勉強になりました。3分入って休憩してまた入る、そのほうが湯あたりしない。硫黄泉や酸性泉みたいに成分が強いところは特に、とか。
で、そのあとなんですけど。
椿が「……詳しいのね」と言った瞬間、泉が「えっ あーえっとー……」と口ごもるんです。そこから出てきたのが「温泉アイドルですから! わんっ」。
ごまかしましたよね今。
ここ何か隠してますよね。
押されてるだけだと思ってた
最初に読んだときは、泉がぐいぐい来て椿がたじたじ、という話だと思ってたんです。待ち伏せみたいに話しかけられるし、雨の日には衣装を見せに来るし、ライブには誘われるし。
でも読み返すと、牛乳をおごりに行ったのも、ライブハウスまで足を運んだのも椿なんですよね。押されてるように見えて、毎回ちゃんと自分から出て行ってるんです。
そのうえでラストです。落ち込んだまま帰る椿を泉が追いかけてきて、椿が思うのが「こんなふうに 私に駆け寄ってくれる人はいなかった これまで誰も——」。
ここで泉は、椿にとって一般の人ではなく特別な人に変わったのでしょうか。
椿が最初に泉に感じたのは「昔飼ってた犬に似てる」でした。そこからこの一言まで来るのに、第1話のあいだしかかかっていません。温泉の気持ちよさを語っているようでいて、ずっと「誰かと生きるのが分からない」人の話だったんだと思います。
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